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October 28, 2004

ノヴェッセイ・ホリーガーデンを読みながら

(ノヴェッセイとは書評を小説風にしたものです。)

 「このゴミいつまで置いとくの! 早く片付けてよ!」。妻の甲高い声に太郎は思わずたじろいだ。
『ゴミって、これは本じゃないか。』太郎は心の中でそう思った。
 小さいころから本の虫だった太郎にとって、本とは常に愛おしい存在であり、それを食べかすのように捨てようとする妻の心情が理解できなかった。
 「とりあえず、通勤の車内で読むことにするよ。」そう言って、山の中の一番上にあった本を何気なく取り上げた。
 物を取るとき、太郎はどういうわけだか一番上にあるものを取る癖がある。着替えを取るときもそうなので、洗濯の済んだ着物を一番上に置いておくといつまでも同じ服を着るはめになる。今回、一番上にあったのは『ホリー・ガーデン』という本であった。
 おかしなもので、物は一番上から取るくせに本は一番最後から読むことにしていた。最後には大体解説やら作者のノートなりがあって、その本の概要がつかめることが多いからである。しかし、この本にはそうした解説めいたものが全くなく、後ろには初出誌の記載と作者の略歴くらいしかなかった。(後になって、作者の「あとがき」があることに気づいたが、それとて全体像が把握できるようなものではなかった。)
 『92年1月から93年12月かぁ。バブルが真っ盛りのころじゃないか。』初出誌の掲載時期を見て、太郎はまずそう思った。
 登場人物は若い女性が多い。どうも作者と同年代と思える。そうなると、太郎は作者がどのように感情移入しながら書いていたんだろうと思わず想像してしまう。一般に感情移入は自分とシチュエーションが近いほうが強く出されがちだからだ。
 主人公と思われる女性。失恋のトラウマに苛まれ、なかなか本当の「恋」が出来ないでいるようだ。そしてその友人でかつての同居人の女性もかつていくつかの恋愛遍歴を重ねたあげく、中年の妻子もちの男性との不倫愛に喜びを感じている・・・
 バブル期にはこうした恋愛ドラマがあたかも「教科書」のごとく書き連ねられていたのではないだろうか。
 「あとがき」の中で、主人公が好きな詩は作者も好きな詩だと作者自身が述べている。まさに、「感情移入」の一つの形態だろうな。電車の中で一気に読み上げた太郎はそう思った。


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